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様々な問題を作り出す「無意識の力み」

今、あなたが練習している曲を頭の中で鳴らしてみましょう。
(この時、指を動かさないでください。ただイメージするだけです)
その時、身体はリラックスしていますか?それとも固まっているでしょうか。

今度は、練習している曲の最も難しい場所を頭の中で鳴らしてみてください。
(この時も指は動かしません)
鳴らすことができないときは、楽譜を眺めてみましょう。

音をイメージしたり、楽譜を見たりするだけで身体がひどく緊張することに気づきましたか?

敏感な人なら、頭の中で音を鳴らしたり楽譜を見た時に、肩があがったり、わきをしめたり、首をすくめたり、お尻に力が入ったり、、と具体的な筋肉の緊張を感じることができたかもしれません。
これらの筋肉の緊張が「無意識の力み」です。(演奏しているときに、今感じた身体の緊張を「具体的に」は認識していなかったと思います)

この「無意識の力み」とは、一体どんなものなのでしょうか。
その正体と、それが演奏に及ぼす具体的な影響について、ここで考えていきたいと思います。

「無意識の力み」とは、文字通り本人がいつどのタイミングで力を入れたのか認識していない筋肉の緊張のことです。
「無意識の力み」は、肩甲骨を上に持ち上げたり頭を後ろに倒したりと、骨が本来おさまるべき場所におさまれないようにして、姿勢をゆがめる働きをします。

姿勢が歪んでしまったら身体は設計通りの動きはできません。
姿勢が歪んでしまうのは、建物が傾くのと同じ。
建物が傾いたら、窓やドアが正常に動かなくなるのと同じで
姿勢が歪むと様々な関節が動かなくなります。

肩をあげたり、首をすくめたりしてピアノを弾いてみましょう。
この時、身体が設計通りの動きが出来ないことは簡単に理解できると思います。

肩をあげたり、首をすくめたりして弾いている時、様々な関節が動きにくくなったことに気づきましたか。
動きにくい関節を無理矢理動かしているとき、関節は歪んだ動きをしています。
このように姿勢が歪むことで、身体の使い方までもが歪んでいきます。

「無意識の力み」に端を発した姿勢の歪みは、動作を歪め、さらなる筋肉の緊張を引き起こします。
その緊張によって姿勢はさらにゆがめられ、すると関節がもっと動かなくなり、、、と負のスパイラルが生まれていきます。

オクターブの連続、長いトレモロ、その他、音が多い難しいパッセージのとき、どんどん力が入って最後には手が固まって動かなくなった、、そんな経験はありませんか。それがまさに、この負のスパイラルの状態です。

こうやって「無意識の力み」は問題を引き起こしていくのです。

実は、さきほどの「頭の中で音を鳴らす」「楽譜を眺める」作業を数回くりかえすと、身体の緊張(無意識の力み)が少しずつ減っていきます。特に技術はいりません。頭の中で音を鳴らしたり、楽譜を眺めたりする時 自分の身体がどんなことをしているのかを「自覚」するだけで身体の緊張は減っていくのです。

いつも通りに演奏をした後で、この「頭の中で音を鳴らす」「楽譜を眺める」作業をし、その後もう一度演奏してみたなら、緊張が減ったことで今までと違う感覚が得られるはずです。
ミスが減る人、音が良くなる人、身体が楽になる人、、変化は人それぞれですが何らかのよい結果が得られると思います。そしてよく注意してみると、姿勢がよくなっていることに気づくかもしれません。

これらは「無意識の力み」がなくなったことで、骨が本来あるべき場所にもどっていき(不必要に肩甲骨が引き上げられたりすること無く)、それによって全体の姿勢が修正され、骨格が設計通りの動きをできるようになったことで起こった変化です。

では、なぜ骨格が設計通りの動きをするようになったことで、演奏が変化するのでしょうか。
それは、骨格が設計通りの動きをするとき、身体が自由に動くようになるだけではなく、身体の様々な器官や機能にも変化があるからなのです。

先ほどの「無意識の力み」によってうまれる、負のスパイラルの状態を思い出してみましょう。
身体がそのような状態のとき、心はどんな状態になりますか。

音楽を心から味わったり感じたりすることはできそうでしょうか。
全身が力んでいるときに、目は見えやすくなりますか。
耳は聴こえやすくなるでしょうか。
呼吸は楽ですか。
音楽に集中できるでしょうか。

「無意識の力み」は、身体を動かしにくくするだけではなく、感情や感覚、呼吸、思考、集中力などにも影響を及ぼすのです。

それとは反対に、身体の中の不要な「力み」がなくなったとき、身体は最大限のパワーを発揮します。
「無意識の力み」がなくなることで、骨格の歪みはなくなり、姿勢が修正されます。
すると身体は設計通りの動きをはじめます。
身体が設計通りの動きを取り戻すと、動作はスムーズになり聴覚、視覚、筋感覚までもが鋭敏になっていきます。
さらには呼吸も整うので、精神的にも安定します。

そういう状態で弾いたら、どうなるでしょう?
心に余裕が生まれ、的確な判断をしながら、音をゆったり感じて豊かな表現ができるのではないでしょうか。

このように「無意識の力み」を解放することは、身体をスムーズに動くようにするだけではなく、演奏するときの精神的、肉体的なベースを整えることにもなるのです。
「無意識の力み」を解放することは、ピアノを弾くという作業にとっての最高の環境を作るということなのです。

足場の悪いところでできない作業も、足場さえよくなれば容易くできます。
環境を整えるだけで、「出来ない」と思い込んでいたことが容易にできるようになるのです。

コンフォータブル パフォーマンス メソッドでは、さまざまな方法でこの「無意識の力み」を解放しながら姿勢を修正し、演奏時に骨格が設計通りに 機能的に動けるようにしていくことで演奏を向上させていきます。

「とりあえず弾く」前に「よりよい身体の状態」を作り、「機能的な身体の使い方」を学ぶことで、練習効率と演奏の質を同時に向上させていきませんか?

コンフォータブル パフォーマンス メソッドとは

コンフォータブル パフォーマンス メソッド(CPメソッド)は、身体の「無意識の力み」を解放しながら姿勢を修正し、骨格が「設計通り」に動けるように促すことで 演奏上の様々な問題を解決していけるようにするメソッドです。

CPメソッドは、ピアニストである私、篠原みな子が、多くのピアニストの身体のケアに携わっているフェルデンクライスメソッドプラクティショナー石井千代江氏に身体についての指導を受けながら、「ピアニストにとって最も必要な解剖学」を追求した末にうまれたものです。

私は、三十代から度重なる手の故障に見舞われ、あわせて、本番になると体中の関節が固まって動かなくなってパニックが起きるという症状も併発しておりました。
その回復のために、様々なボディーワークのレッスンを受けるうち、ピアニストの「身体の常識」が身体のエキスパートの「身体の常識」と大きくかけ離れていることを知りました。
そして、そのピアニストの「間違った身体の常識」こそが多くの問題を生みだしていることに気づきました。

自分の中のピアニスト目線の「間違った身体の常識」を書き換え、身体の使い方の根本を見直していくことで、自らが回復していったことをきっかけに、2008年からメソッド開発のための研究をはじめ、その末に「骨格が設計通りに動く時、全てがうまくいく」という1つの答えに辿り着きました。

怪我や痛み、奏法における問題、精神的な問題、これらの問題は関係がなさそうですが実は原因は同じ。
骨格が設計通りではない動きをしたときに起こります。
そしてプロとアマチュアは演奏レベルは違っても、問題が起きる時の仕組みは同じでです。

全身は、“繋がって動く”ように設計されています。
骨格が“設計通りに動く”ということは、全身が“繋がって動く”ということを意味します。
身体は、機械の歯車が連動していくように、どこかの骨が動くとそれにつれて全身の骨が動くようにできているのです。

全身を繋がった状態で使う最高の先生は乳幼児であると言われていますが、彼らは「頭をかく」という動作をするときでさえ、腕はもちろんのこと胴体や脚までも一緒に協調した動きをするのをご存知ですか?

指先の小さな動きにさえ、全身がそれに連動して動くのです。
本来、身体はそのように作られているのです。

それなのに多くのピアニストは指だけ、腕だけ、、と部分の動きだけをコントロールすることに熱中してしまい、身体の他の部分を「腕を支える場所」であるかのように扱うことで、本来の身体の設計とは全く違った、「一部は動かし、他は動かさない」という状況を作り出してしまいます。
これが全ての問題の原因です。

「一部を動かし、他を動かさない」ということは、連動している歯車の1つを止めて機能させないようにしながら、他の歯車を無理矢理動かすのと同じことです。
動きは鈍く、故障を招きやすく、仕事の効率もひどく落ちてしまいます。

多くの人は、生活の中で色々な身体の使い方の癖を身につけ、成長の過程で乳幼児のような繋がった動きを失っていきます。
そして、どこかの骨の動きを止めてしまうかわりに、他の骨をひねったり、必要以上に大きく動かしたりしながら、なんとかやりくりして身体を使っています。

日常生活だけならば、それで問題はないでしょうが(老人になって無理をかけた部分が傷むということを考えると問題がないとは言えませんが)、同じ動きを膨大な回数繰り返すピアニストがこれをやったら、過剰に負担を課された部分や無理に動かしている部分が、あっという間に疲労したり故障したりするのは当然のことです。

「一部を動かし、他を動かさない」という使い方は、本来一緒に動くように設計されている部分を動かさないのですから、歯車の例でご説明したように全身に大きな緊張を生じさせ、身体に大きなダメージを与えます。
この時に発生する緊張を、CPメソッドでは「無意識の力み」と呼んでいます。

その「無意識の力み」によって、姿勢が歪み、それによって身体の使い方が歪んでいくこと、さらには感情、感覚、思考、集中力など、他の領域にもダメージがあるということは『様々な問題を作り出す「無意識の力み」』の中でご説明した通りです。

さて、その説明の中で、姿勢が歪むと「関節の動きも歪む」というお話をとりあげたことを覚えているでしょうか。
実は、この「関節の動きが歪む」という問題は、オーケストラのようにたくさんの声部を1人で演奏するピアノという楽器を正確に操ることに、致命的なダメージを与えることになるのです。

身体の関節は、筋感覚のフィードバック機能の中心になっているのをご存知でしょうか?

これは「脳が、『関節の動き』によって『身体がどう動いているのか』を理解する」ということを意味します。
関節が歪んだ動きをしたら、脳は「身体がどのように動いているのか」を正確に認識できないのです。

『様々な問題を作り出す「無意識の力み」』の説明の中で、身体が硬直していく負のスパイラル状態について触れましたが、そういう緊張状態に陥ったとき「一体何を弾いているのか、よくわからない」と思ったことは、ありませんか。
それが速いパッセージであるとき、ふと、どういう指遣いだったのか急にわからなくなったりしたことは、ありませんか。
「この音で止まってください」と言われても、いつどの音を弾いているのか認識できず、うまく止まれなかったりしたことは、ないでしょうか。

これらは「無意識の力み」によって、関節の動きが歪んだ結果脳が、身体の動きを認識できなくなったという状態なのです。
「何を弾いているかわからないで練習している」というのは、ピアニストにとって、致命的な問題です。

何を弾いているのか正確にわからず練習していたなら、、、
自分の演奏を検証できないのですから上達するはずがありません。
自分で問題を解決していけるはずもありません。
暗譜がきちんとできるはずもありません。
舞台で突然、音がわからなくなったとしても何の不思議があるでしょうか。

そんな状態で練習して、本番前に不安にならないはずがありません。
きちんと音が認識できた状態で練習したとしても、緊張は起こりますから音が認識できていない練習で迎える本番の不安は計り知れません。
場合によっては本番でパニックが起きて頭が真っ白になることも起こりえます。

「身体が設計通り」に使われるかどうかということは、このようにピアノ演奏にとって重要なたくさんの領域に関わることなのです。
「骨格が設計通りに動く時、全てがうまくいく」ということの意味がおわかりになったでしょうか。

このメソッドでは、つながりが切れてしまったり、動くことを忘れてしまった骨の動きを回復させながら、「無意識の力み」を解放し、全身が「骨格が設計通りの動き」をできるようにしていきます。

設計通りの構造に従った動きを学び、姿勢を改善していきその良い姿勢から、さらに質の高い動きを学び、身体が合理的に、効率的に使われるようにしていくのです。

「身体のつながりを回復させるためのエクササイズ」は、石井氏にご指導頂いたものの中から私自身がレッスンする中で、最もピアノ演奏の改善に効果の高かったものを選びだしました。
そしてどの動きが、具体的に演奏上のどの問題解決に効果があるかを7年かけて紐付けしていきました。

メソッド開発過程では、私の教室の生徒だけではなく、モニターをつのり、はじめてお会いする方々の反応、効果なども検証していき、さまざまな年齢、さまざまなキャリアの方にもお試し頂きました。

現在は、アマチュアからプロまで、さまざまな方々のサポートをおこない、大きな効果をあげています。

ピアノ演奏における快適さ

ピアノ演奏における“快適さ”について考えたことがありますか。
コンフォータブル パフォーマンス メソッド(CPメソッド)とは、その名の通り「演奏上の快適さ」を追求したメソッドです。

CPメソッドは、「無意識の力み」を解放することで、演奏時の心身のストレスを解消し、ピアノ演奏にとっての最高の環境を作るということを目的としています。

これは、肉体の違和感、疲労感や、上手く動かないもどかしさなどに気をとられたり、楽譜の難しさに気をとられたり、誰かに何か言われるのではないかということに気をとられたり、、という、『音に集中すること』を邪魔する全てのものから解放されて安心して『音を味わい、抱きしめること』ができるようにしていくということを意味しています。

つまり、それは弾いている時に「音楽と自分の存在だけ」になる感覚であり、音楽を心一杯に感じて、それをどう表現していくかということだけに集中できる状態です。

音楽以外の様々な問題にエネルギーを奪われて演奏していたら肝心の音楽にエネルギーを使うことができません。

身体に辛さがあったら、音を気持ちよく感じることができません。
音を感じられていない状態で、何をどう表現していくのか考えることはできるでしょうか。

様々な問題を抱えながら、複雑で繊細な作業を行うことで、その作業はより困難になります。
様々な問題が山積みの居心地の悪い状態の中で、外からの影響を受けないほどにものごとに集中することはできません。

音楽以外の問題にエネルギーを奪われて演奏することは、フロントガラスがひどく汚れた車を運転するようなものです。
景色を楽しむこともできなければ、いまどこにいるのかを把握することもできずもちろん目的地に到達することもできません。

フロントガラスをピカピカに磨くように、自分の中の「音楽以外の問題」をひとつずつ解決していきましょう。
今いる場所と景色を楽しむように今、この一瞬に奏でている音を味わい楽しみましょう。
そして自分の望む表現を実現していきましょう。

「心地よく」その場にいられれば、身体は機能し、集中力はあがります。
そうなることで、力は遺憾なく発揮され、「思い」は確実に形になっていくはずです。

CPメソッドで、ご一緒に「快適な演奏」と「最高の結果」を同時に手に入れていきませんか。